アメリカ海軍|原子力潜水艦の食事事情とは?

アメリカのワシントン州にある海軍基地を母港にする、原子力潜水艦ケンタッキーを例に、
原子力潜水艦の食事事情とは一体どのような物なのか?を、全体的に見て行きましょう。

今回、事例として紹介する原子力潜水艦ケンタッキーの乗員数は160名。
一度港を出れば4か月にも及ぶ航海が待っていますが、弾道ミサイルを配備した排水量約1万8千トンの
この原子力潜水艦が出航する前に、任務期間である4か月分の食料を積み込む作業が待っています。

先ずは原子力潜水艦に食糧を積み込む作業から始まる

原子力潜水艦に積み込まれる食糧の内訳は、およそ41トンの食品に、
14トンの冷凍食品、そして約3.6トンの新鮮な野菜や果物です。
これらの総重量は合計60トン近くにもなり、乗員一人当りで計算すると約350キロ。


潜水艦の調理係は一度の航海で、合わせて7万6千食以上の食事を作らなければなりません。

総計25万ドルの大量の食糧が、外の世界から完全に孤立した原子力潜水艦内に積み込まれる訳ですが、
これら大量の食糧が、太平洋を巡回する間、原子力潜水艦の乗員を支えることになります。
そしてその準備は、積み込み作業が始まるはるか以前から進められています。

原子力潜水艦に食糧が積み込まれる前の事前準備とは?

潜水艦が出航する前、一旦、積み込まれる食糧は地上にある専用の倉庫に搬入され、
そして搬入された食糧は、各々分類されたのち、潜水艦専用のケースに収められます。
このケースはおよそ2300キロの食糧を収納可能で、さらにケース内には、
重さ100キロほどの食糧を載せる事ができる棚が、幾つも取り付けられます。

そして潜水艦が一端出航すれば、艦内に搬入された、この食糧専用ケースから、
その都度、必要な食糧を調達する訳です。

しかし食糧品がぎっしりつまった専用ケースを、地上にある専用倉庫から潜水艦に積み込むのは
大変な作業になりますので、潜水艦の乗組員が、

65メートルもある巨大クレーンを使い、なんと2日間もかけて、
17個もある専用ケースを一つずつ、慎重に原子力潜水艦の奥深くに
降ろして行くのです。

この際、安全に搬入する為に、潜水艦には専用の滑走装置が取り付けられた食糧積み込み用の
箱が装備されているのですが、これを使ってケースを降ろして行きます。
この方法なら潜水艦にも食糧にも損傷を与えずに済むからです。

こうして狭い艦内に全ての食糧ケースが無事積み込まれると、
残りの食糧は、人海戦術で詰み込まれます。

潜水艦の上甲板に集まった乗員たちが、次々とバケツリレー方式によって、
段ボールに入った食糧を艦内の食糧保管室に運んでいきます。

食糧ケースに入りきれなかった食糧が、このようにして積み込まれ、
出航の為に必要な物資が満載されて行くのです。

潜水艦は海に出ている間、食糧を補充する事ができません。
水や空気は艦内で自ら作り出す事ができますが、食糧は十分に備えていないと、
やがて底をつき、死活問題になってしまうので、いかに潜水艦にとって食糧が重要かが分かります。

潜水艦の食事メニューのサイクル

任務についている間、潜水艦の食事のメニューは21日のサイクルでまかなわれます。
乗員は3週間、毎日違った献立が楽しめる訳ですが、そこには問題も有ります。

航行中、新鮮な野菜や果物が食べられるのは最初の2週間から3週間だけで、
その後は缶詰などで補うしかありません。しかしこの方法だと新鮮な食材より味が落ちるのが
彼らにとっての悩みらしい。

とは言うものの、ロブスターからエビの炊き込みライス、プライムリブのロースト、
そして様々なデザートなど、潜水艦内の食事は実に豊富なメニューが揃っています。

何か月も狭い艦内で厳しい任務に就く乗員にとっては、こうした豪華で美味しい食事が
何よりの楽しみであり、このような食事こそ兵士の士気を高めるのです。

また、厨房は24時間稼働していて、調理係は朝食、昼食、夕食、そして夜勤用の食事作りに
追われます。このように、潜水艦の乗組員にとって厨房や食堂は、とても大切な場所であり、
我が家のようなものであり、食事時になるとやって来ては美味しい食事を食べて士気を養うのです。

潜水艦で出される食事は全軍隊の中でも最高ランク級!?

潜水艦で出される食事は1940年代以降、アメリカ軍の中でも最も美味しい食事として
位置づけられて来ました。しかし一流なのは提供される料理だけではなく、
使われる食材も、その食材を調理するシェフの腕も一流です。

潜水艦ではパンも自家製で焼く?

調理師たちはフランスパンも厨房で粉を練り、オーブンに入れて焼きます。ハンバーガーや
ホットドック用のパンも含めて、全て艦内の厨房で焼いている自家製の手作りなのです。

水などの飲み水はどうしているのか?

食べ物については、潜水艦が出航する前に積み込んだ大量の物資で何とかしのげるものの、
飲み水などの生活用水はどうしているのでしょうか?

潜水艦内には水の蒸留装置が装備されており、
その蒸留装置の中に外から海水を取り込んで加熱します。

これは加熱する事で水分を蒸発させ、塩分を水から分離させて取り除く為です。
こうして発生した蒸気を冷やして水に戻し、専用タンクに貯蔵します。

この蒸留装置で1日辺り、約4万5千リットルの真水を精製し、
飲料水として使用したり、調理や清掃にも使用しているそうです。

しかしこうした装置は便利な反面、乗員の生活スペースがとても狭くしているのが悩みの種だという。
原子力潜水艦ケンタッキーは全長が170メートル、幅12.8メートル。
4階建てビルほどの高さが有りますが、調理室はわずか28平方メートルしかありません。

さらに食堂の収容人数は45名で、乗員のおよそ3分の1しか入れません。
そこで解決策が考えられました。

それは、毎朝、食事時間の30分前に、最初のグループを起こすというもの。
食事時間は10分〜15分。食事が済んだら、直ぐに食器を片づけ、シフト交代相手の所へ行きます。
今度は交代した相手が同じ事をして、1時間で全員の食事が終わります

潜水艦の中では食事作りよりも、もっと大変なのが後片付け

なぜなら食べ残しや生ごみを貯めて置く場所が無いからです。
そこで考えられた解決策が、毎日出る生ごみを、網目上のスチール缶に圧縮して入れる事です。
しかもそれを海に投棄するというのですから、驚きです。

生ごみを圧縮して入れる網目状のスチール缶とは何か?

これは生ごみを出す時、板と同じような薄く平ぺったい網目状のスチールを持って来て、
艦内に装備されている専用の工具を使って丸め、筒状のスチール缶に加工して作っていきます。

そして出来上がったスチール缶を、専用のごみ圧縮機にセットし、約21MPAの圧力をかけて、
生ごみを詰め込みます。そして更に、生ゴミを詰めたスチール缶の重さが規定の重さになっているか
確認した後、海中にゴミを投棄する専用装置に入れて、そのまま潜水艦の外へと排出します。

海中にゴミを投棄する専用装置は、一度に4つのスチール缶をセットでき、
約69メガパスカルの水圧をかけて、潜水艦の外へと排出します。

海中へ排出されたゴミは、網目状になったスチール缶の穴から海水が染み込んで行く事で、
容器が浮かび上がらず、海底に沈んだままになる設計になっています。

またプラスチック類は海に投棄できない唯一の物で、潜水艦が帰港してから処理する決まりに
なっているそうですが、スチールを生ごみと一緒に投棄して、プラスチックはなぜダメのか
よく分かりません(笑)

潜水艦の乗組員に時刻を告げる役割を果たしている食事

乗組員を支える食事は、単に栄養を付けて元気を出させる目的だけではありません。
潜水艦に乗っていると、長い間、日光を見る事が無いので、時間が分からなくなる事が有ります。
そこで、食事の時間が目安になります。

例えば5時半だったら、朝の5時か、夕方のの5時かハッキリしなくても、食堂に来て、
テーブルの上にステーキソースが置いて有れば、今日のメニューはステーキなんだ、と分かります。
つまり、今は夕食の時間だ、という事が分かるのです。

以上、アメリカ海軍の原子力潜水艦の食事事情の全体を、ざっと簡単に説明してきましたが、
いかがでしたでしょうか?

私たち一般の人には想像もつかないような世界がそこに有り、食事の有り方一つとっても
様々な工夫や苦労が有るのがお分かりになった事でしょう。

2017/06/17


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posted by ミニ助 at 17:48 | ミリタリー系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする